中小企業従業員の健康保険を運営する全国健康保険協会(協会けんぽ)が支払う医療費が12月中旬にも枯渇する見通しであることが10月28日、厚生労働省の調べで分かりました。赤字国債を発行するための特例公債法案が成立せず政府が予算執行抑制を続け、協会けんぽに対する補助金支出を見合わせているためです。
医療費の枯渇時期の予想は、インフルエンザなどの感染症の流行で新たに増大する医療費を想定していません。このため厚生労働省は「枯渇が早まることもありうる。医療費の推移を見守りたい」(厚労省幹部)として、
早ければ11月中にも枯渇する可能性もあるとみています。
協会けんぽから病院への医療費の支払いが滞ると、医療費の3割を自己負担している協会けんぽ加入者らが全額負担しなければならない事態に陥る可能性があることから、協会けんぽは銀行からの借り入れ方針を決めました。補助金が滞ることが原因の借り入れは初めてで、借金の利子は加入者が負担することになるそうです。
中小企業が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)は、病気やケガで会社を休んだときに支給する傷病手当金の給付状況をまとめました。2011年は精神疾患で給付を受けた会社員が一番多く、全体の26%を占めました。2番目はがんの19%で、循環器の疾患が11%で続きました。
協会けんぽが11年10月に傷病手当金を受け取った約7万8千人を対象に調査しました。精神疾患は1995年は全体の4%でしたが、07年に約20%となり、11年には全体の3割弱を占めるまでになりました。がんも95年の14%から増えています。
一方、循環器系や消化器系の疾患は減少傾向にあります。がん検診などの浸透で早期に病気を発見し、予防する意識が高まっていることが背景にあるとみられます。
傷病手当金は最大で1年6カ月支給しますが、平均支給期間は174日でした。病気別に支給期間をみると、精神疾患が229日、循環器の疾患が209日、神経系の疾患が200日でした。
厚生労働省は10月19日、仕事中にけがをしたシルバー人材センターの高齢者らが労災保険の対象にならない場合、健康保険を適用して救済する方針を固めました。健康保険も労災保険も適用されず「制度の谷間」に落ちてしまう人が治療費の全額自己負担を強いられるケースが相次いだため、対策を協議していました。
厚労省は社会保障審議会医療保険部会での議論を経て、2013年の通常国会に健康保険法改正案を提出したい考えです。
シルバー人材センターを通じて請負の形で仕事をする高齢者や、インターンシップ(就業体験)中の学生らは、センターや企業との間に雇用関係がないため、仕事中にけがをしても労災保険を受けられない現状です。
印刷会社の元従業員らが相次いで胆管がんを発症した問題で、厚生労働省は10月12日、印刷業に従事した経験のある11人が新たに労災申請したことを明らかにしました。申請は計45人(うち死亡29人)となりました。
この問題は、大阪や宮城県など全国の印刷会社でインクの洗浄作業などに関わっていた従業員らが相次いで胆管がんを発症したことが明らかになったものです。
厚労省によると、新たに申請した11人は男性10人と女性1人で、女性を含む6人は死亡します。年齢別では30代1人、40代2人、50代2人、60代6人。30代の男性はこれまでで申請が最も多い大阪市の印刷会社の従業員といいます。
厚生労働省は、先月専門家による検討会を設けて、申請した従業員らが労災に当たるかどうか検討をしていて、今年度中に一部の従業員らについては結論を出したいとしています。
国土交通、厚生労働の両省は建設業者に対し、従業員の社会保険への加入徹底を促すため、11月1日から建設業の許可・更新時や抜き打ち検査で保険加入状況を記した書面を確認する制度を導入することとしました。改善しない場合、厚労省の地方労働局や年金事務所に通報することとし、労働局などの立ち入り検査を拒否し続けると、数日間の営業停止や強制加入措置の対象とするとのことです。
国交省の調査によると、建設労働者の2割が雇用保険、4割が健康保険や厚生年金に加入していないそうです。ピークの1992年には84兆円あった建設投資が半減し、受注競争が激しくなっています。発注主からの価格引き下げ圧力に応じるために、下請け業者の間では社会保険料を削る傾向が強まっているとのことです。