企業年金の一種である厚生年金基金で全体の5%にあたる28の基金が解散の方針を固めました。継続しても財政状況は改善しないと判断したためです。解散に踏み切るのは母体企業に厚年基金の積み立て不足を穴埋めする財務余力がある基金が中心で、母体企業に余力の乏しい厚年基金の動きは鈍いままです。
厚生労働省は厚年基金の解散条件を緩和する法案を検討しています。しかし、同法の施行を待ち厚年基金が解散しようとすると、その間に財政がさらに悪化するリスクもあるため法施行を待たず解散に動き出しましたとのことです。
全国570ある厚生年金基金の状況を調査したところ28基金が解散の手続きに入っているようです。厚生局との協議が順調にいけば来年度にも解散が認可されます。
ただ、解散の動きは600近い厚生年金基金からみると一部にとどまっています。厚生年金が解散する場合、国から預かっている運用する資産を返還しなければなりません。多くの基金は積立不足を抱えているうえに中小企業の企業の体力が弱く、積立不足を穴埋めできないため、解散をとどまっています。
解散には申請から認可まで1年ほどかかり、財政悪化が進む可能性もあります。解散手続きに入った28基金の多くは積立不足を抱えていますが、早めに解散したほうが母体企業の穴埋め負担は軽くて済むと予測しています。
厚生労働省の調査で、過去2年間、国民年金の保険料を一度も支払わなかった滞納者は、加入者の26%余りに上ることがわかりました。これまでで最も多いということです。
国民年金について、厚生労働省は、3年おきに実態調査を行っており、このほど去年3月時点の加入者を対象にした調査結果を公表しました。それによりますと、平成21年4月から去年3月までの2年間、月額1万5千円前後の保険料を一度も支払わなかった滞納者は455万1000人で、加入者全体に占める割合は26.2%に上りました。これは、前回の調査より2.6ポイント増え、調査を始めた平成8年以降、最も多いということです。
支払わない理由を尋ねたところ、「保険料が高く支払うのが困難」が74%で最も多く、次いで、「年金制度の将来が不安・信用できない」が10%でした。また、「保険料が高く、支払うのが困難」と答えたのは、世帯の所得が1000万円以上の人でも56%で、最も多くなっています。
一方、学生であることや所得が低いことを理由に、保険料の全額免除や支払いの猶予を受けている人の割合は、前回の調査を2.7ポイント上回る25.2%で、対象を広げていることもあり、最も多くなりました。
厚生労働省は「保険料を支払える滞納者には督促をする一方、保険料を支払えない人には免除制度があることを周知していきたい」と話しているといいます。
厚生労働省は2012年12月18日、非正規の労働者の能力開発に向けた報告書をまとめました。再就職を目指す失業者が中心だった公的な訓練制度を見直し、一度も正社員として働いたことのない人を対象に拡充する方針を示しました。正社員との待遇の格差を縮めるのが狙いです。2013年度から予算の措置や法整備に取り組むということです。
全雇用者に占める非正規社員の割合は11年に35%となり過去最高を記録しました。一方で企業間を移動する可能性の高い非正規社員への職業訓練は、企業の対応が手薄になっています。職場内外の研修や訓練の機会は、非正規では正社員の半分程度にすぎないのが現状です。
18日にまとめた報告書は公的機関や業界団体、教育機関が連携し、非正規の職業訓練に取り組むことが必要と指摘しました。離職者が中心だった公的な訓練制度を非正規向けに広げるほか、訓練期間を現在の半年以下から1〜2年まで延長し、即戦力の人材を育成できる体制を整えます。
企業主体の取り組みを促すため、非正規にも正社員と同様に職業訓練を実施する企業に助成する制度を導入、訓練のノウハウの共有も進めるようです。
また、職業能力を客観的に評価できる指標も整備するとのことです。
平成22年に出産した母親が出産前後に仕事をやめた割合は54・1%と、平成13年に行われた前回調査と比べて13・3ポイント減少したことが13日、厚生労働省の調査で分かりました。
常勤だった女性が仕事をやめた理由は、
「育児に専念したい」 40・7%
「仕事を続けたかったが両立が難しい」 35・3%
「妊娠に関連した健康上の理由」 25・6%
となっています。
建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み健康被害を受けたとして東京、埼玉、千葉の元建設作業員308人(うち199人死亡)について、本人と遺族計337人が国と建材メーカー42社に慰謝料など総額約120億円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は5日、国の対策が不十分だったと認め総額約10億6000万円の支払いを命じました。メーカーの責任は否定しました。石綿被害で国の責任を認めた判決は大阪の石綿紡織工場元従業員による集団訴訟の1審であるが、元建設作業員による訴訟では初めて。
始関(しせき)正光裁判長は、石綿の危険性が医学的に確立した時期について、「国は遅くとも昭和56年以降は、事業者に罰則を伴って防じんマスクの着用を義務づけさせたり、作業員に危険性を伝えたりすべきだった。こうした対策を怠ったことは著しく不合理で違法だ」と指摘。メーカーや事業者について「何の責任も負わなくていいのかとの疑問があるが立法政策の問題。血税で被害の一部を補填(ほてん)することを踏まえ、立法府と関係当局に真剣な検討を望む」と述べました。
その上で同年以降に屋内で作業に従事し肺がんや中皮腫になった元作業員158人について遺族を含む計170人に賠償を認めました。吹きつけ工については国の庁舎工事での石綿吹きつけが禁止された後の74年以降を賠償対象としました。
判決について、厚生労働省は「判決の内容の詳細はまだ把握していないが、判決で国の主張が認められなかった点があり、厳しい判決だと理解している。判決内容を十分検討するとともに、関係する省庁と協議したうえで今後の対応を決めたい」とのコメントを出しました。
一方、弁護団長を務める小野寺利孝弁護士は「国の責任を認めた点は評価できるが、企業の責任を認めなかったのは不当であり控訴したい。あわせて国会に対しても、被害者を救うための立法的な措置を行うよう求めたい」と述べました。