厚生労働省は3日、2010年度「労働経済の分析(労働経済白書)」を公表しました。白書では、企業のコスト抑制志向と労働者派遣制度を巡る規制緩和などで、企業が非正規社員の割合を増やしたため、年収200万円台以下の低所得層が拡大し、所得格差が拡大していると分析しています。
そのうえで、所得の引き上げや安定した雇用環境を整えるには、非正規社員を正規社員に転換するのが重要だと提言し、社会の発展には雇用安定や人材育成が不可欠と結論づけました。
1997年と2007年の年収分布を比較すると、年収100万円前後から300万円前後の非正規労働者が増え、全労働者における年収200万円台以下の層の割合も増えたことを指摘。
その一方で、企業が長期安定雇用を再評価し始めていることにも言及しました。労働政策研究・研修機構が1月、国内の3025社に採用方針について聞いたところ、これまでは「即戦力となる人材を採用する」が多かったのが、今後は「将来成長が期待できる人材を採用する」企業が多いことを挙げ、入社後の人材育成を重視する方向に転換しているとしました。
また雇用動向では、国が企業の人件費の一部を補助する「雇用調整助成金」など、雇用維持への取り組みが経済を下支えしたと評価しました。一方、雇用削減を避けるため「賃金調整が特に大きくなった」とも分析。雇用の拡大には医療や福祉、環境などの新産業を育成するとともに、既存の製造技術をじっくり育てることも重要だと提言しています。
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