厚生労働省は28日、介護保険の要介護認定で、4月に導入した新しい認定基準を修正することを決めました。導入した新基準では、在宅利用者を中心に要介護度が旧基準より軽く判定される傾向にあるため、それを是正するのが狙いです。修正した基準は10月から適用します。
要介護認定は介護の必要度を8段階で判定します。厚労省は今年4月、調査項目を減らした上で、調査員の判断基準も変更しましたが、介護関係者から「要介護度が軽くなる」との指摘が出ていました。実際、同省が4、5月に認定申請した28万人を調べたところ、介護保険を使えない「非該当」の割合が前年の0・9%から2・4%に増えるなど、軽度に判定される割合が高まっていました。
同省では、主に身体機能や生活機能に関する判断基準を修正し、軽度に判定される割合を減らす方針です。例えば、「薬の内服」や「洗顔」の項目では、現在は実際に行われている介助方法を記載します。しかし、「介護者が必要な介助を行っていないケースもある。そうした場合には軽く判定されてしまう」との指摘を受け、本来必要な介助方法を記載するよう改めることにしています。
新認定については、変更前の3月に判断基準を一部修正したほか、4月には利用者の希望に応じて従来の要介護度を維持できる経過措置を導入したため、現場で混乱が起きていました。同省は今回の修正に合わせて経過措置を廃止する方針です。
介護保険制度で要介護認定の新基準が導入された4月以降、サービスの水準を決める要介護度が低く判定されるケースが増えていることが分かりました。介護保険利用者の実態に合っていないことが明らかであれば、速やかに基準を見直すべく、厚生労働省は専門委員会をつくり判定の検証作業を続けています。
要介護度は低い順に「要支援1」から「要介護5」まで7段階あり、そのほかに、支援の必要が認められない「非該当(自立)」があります。介護保険のサービスを受けるためにはまず、市町村などに申請して、どの程度の介護が必要かの要介護度の判定を受けなければなりません。 判定は調査員の聞き取りなどを基に1次判定を経て、認定審査会での2次判定で正式に決まります。今回基準が見直されたのは、1次判定についてです。調査項目をこれまでの82から74に絞り込み、調査の視点も「日常生活への支障があるか」から「実際に介助されているか」という判断に変わりました。
見直しの理由を厚生労働省は、調査員の主観を排除し、地域間の認定のばらつきを解消するためとしています。しかしその一方で、「制度改正により、不適切な変更を是正する」という厚生労働省の内部資料も見つかりました。これでは、新基準導入の狙いが、軽度への移行を促し、介護給付費の抑制を目的としていると見られても仕方がありません。実際4〜5月の新規申請者のうち、「非該当(自立)」と判定された人が全体の5%と、前年同期より倍増していたことが厚生労働省の調査で分かっています。
厚生労働省は4月半ば、専門委員会の結論が出るまで、希望者には従来の要介護度でサービスを受けられる暫定措置を決めましたが、新規の認定申請者は対象外のため、不公平感が残る可能性もあります。
内閣府は24日、全国の20〜44歳の男女を対象とした結婚や子育てと就業に関する意識調査の結果を公表しました。子どものいる女性に「出産や子育てをきっかけに勤め先を辞めたり、1年を超える期間仕事をしなかったことがあるか」を聞いたところ、「ある」が56.6%、「ない」が38.6%でした。
退職又は休業した理由(複数回答)では「勤め先や仕事の状況」が50.8%で最も多く、「家事や育児に時間を取りたかった」が46.1%で続きました。内閣府は「企業での子育て支援制度の充実や育児休暇を許容する雰囲気づくりなど、女性が活躍できる職場環境づくりが重要」としています。
こうした中、厚生労働省はワークライフバランス(仕事と生活の調和)を後押しする専門家を活用した企業を支えるため、人件費の助成制度を年内にも導入する方針です。政府や地方自治体がワークライフバランスに取り組む企業の支援を強化し、東京都足立区や秋田県のように、企業向けの助言・相談業務に乗り出す自治体も増加しつつあります。景気後退で労働時間が減るなか、仕事と育児・介護などとの両立を考える好機になりそうです。
ワークライフバランスは働き方を見直すための試みで、企業が社員の働く時間や日数を減らしたり、年次有給休暇の取得を促したりします。
兵庫県尼崎市の「クボタ」旧神崎工場で下請けとして働き、石綿(アスベスト)の運搬作業に従事し、肺がんで死亡した男性の遺族が21日、「安全対策を怠った」などとしてクボタと国に約4600万円の損害賠償を求める訴えを神戸地裁に起こしました。
訴状によると、男性は同工場が毒性の強い青石綿を使っていた1961〜67年、クボタの下請けで石綿を搬送する運送会社に勤務していました。2004年に肺がんと診断され死亡し、2006年に尼崎労働基準監督署から石綿が原因とする労災認定を受けました。
原告側は、クボタが石綿の有害性を認識しながらマスクを着けさせるなどの安全対策を怠ったと指摘。国に対しては「被害を予見できたにもかかわらず、適切な規制などを講じなかった」と主張しています。
また、尼崎市内などの鉄工所で石綿を扱い、石綿曝露による肺がんで亡くなった別の男性遺族が同日、国に約6700万円の損害賠償を求める訴えを同地裁に起こしました。
横浜市や川崎市で学習塾「学樹舎」を運営する学樹社(横浜市)が、各校舎の校長などを管理職とし、時間外労働に対する割増賃金を支払わないのは不当であるとして、元校長ら2人が同社に未払い分の支払いなどを求めた訴訟の判決で、横浜地裁は23日、同社に計約1千万円の支払いを命じました。
同社は、正社員48人中、38人を管理職として扱って時間外手当を支払っておらず、原告らは2005年2月から2年分の未払い賃金などを求めていました。深見裁判長は判決理由で、「38人いずれも管理監督者とする主張は到底採用できず、労働基準法に違反することは明らか」と述べました。