佐川急便東北支社で派遣社員として働いていたAさん(当時29歳)が過労によるうつ病が原因で自殺したとして、母親(56)が仙台労働基準監督署に請求した労災申請について、労働保険審査会は3日、仙台労基署の不認定を取り消し、労災を認める逆転の裁決をしていたことがわかりました。決定は7月29日。同審査会が逆転裁決を下すのは異例ということです。
審査会は、Aさんの労働時間などは厚労省が指針で定める基準には当たりませんが、午後7時〜翌日午前4時の勤務を5年以上続けていて、必要最小限度の睡眠時間を確保することが困難な状態が続き、「仕事が原因でうつ病になった」と認定しました。
審査会の裁決書などによると、Aさんは遅くとも06年2月にうつ病になり、同年3月、自宅で自殺しました。自殺前の約1年間は1か月あたり100時間を超える時間外労働を続けていたといいます。
仙台労基署は08年1月、労災の不支給を決めるなどしたため、遺族は審査会に再審査を請求していました。母親は「やっと分かってもらえた。機械のように働かせて反省もしない会社に怒りを覚える」とコメントした。仙台労基署は「決定に基づいた対応をしたい」としています。
さらに、母親は昨年4月、佐川急便と羽田タートルサービスを相手に、約9,335万円の損害賠償を求める訴訟を仙台地裁に起こしていて、いまだ係争中です。
兵庫県内の複数の知的障がい者が就労後、障害等級を軽度に認定されて障害年金を停止されたり減額されたりしていたことが、障がい者団体などへの取材で分かりました。同団体によると、兵庫県内だけで少なくとも13人いるということです。一方、兵庫社会保険事務局は「総合的な判断で等級を決めており、就労だけが理由ではない」と説明しています。
障害等級は1〜3級があり、社保事務所が医師の判断をもとに判定します。
知的障がい者の家族でつくる「兵庫県手をつなぐ育成会」によると、13人は就労した2006年以降に障害等級を軽度に認定されたため、中には6万円の給与を得るようになったものの、月6万6千円の障害基礎年金がゼロになった人もいたということです。一部の障がい者は社会保険審査会に再審査を求めたが、棄却されました。
育成会側から相談を受けた兵庫県も昨年、厚生労働省に是正を要請し、7月17日付で社会保険庁は全国の社保事務局に対し、誤解を与えないような審査を求める通知を出したということです。
アスベスト(石綿)が原因で肺がんになった男性(71)が、30年以上前の電気工事工時代の労災保険が適用されず、休業補償が半額以下になったのを不服として国を相手取り、処分取り消しを求めた訴訟の判決が30日、横浜地裁でありました。
原告の男性は1955年から電気工事工として働いた後、87年に会社を設立し、94〜01年に自営業者向けの労災保険に特別加入しました。
04年に肺がんと診断され、労災認定を求めましたが、労働基準監督署は06年、直近職場での保険を適用する厚労省の基準に沿って、特別加入の労災保険を適用し、休業補償を年間約146万円に決定しました。男性は「肺がんは電気工事工時代の石綿が原因」として、当時の労災保険に基づく年間約320万円以上の休業補償を求め、行政不服審査を申し立てたが棄却され、昨年3月に提訴しました。
今回の判決で裁判長は、石綿肺がんの多くは潜伏期間が20〜60年程度と非常に長いことを指摘しました。
この男性は会社設立後の仕事では石綿と濃密に接触していない一方、電気工事工時代に高濃度の石綿を吸ったため肺がんにかかったと認定し、発症直近の労災保険を適用する厚生労働省の基準を批判したうえで、処分を取り消しました。
同様の訴訟は岡山地裁でもあり、厚生労働省の適用の判断に影響を与えそうです。厚生労働省補償課は、「特別加入と労働者期間が併存する場合については最近の医学的な知見などを踏まえ取り扱いを研究している。」と話しています。
中央最低賃金審議会は29日に、2009年度の最低賃金改定額の「目安」をまとめ、舛添要一厚生労働大臣に答申しました。
生活保護の水準を下回る地域には逆転の解消を求め、最低賃金が生活保護水準を上回る35県は改定額を示さずに、「現行水準の維持を基本」とする実質的に据え置きとした内容でした。
昨年施行された改正最低賃金法は、生活保護にかかわる施策との整合性を求めています。地域別最低賃金は都道府県ごとに決まっていて、中央の審議会が毎年夏に改定額の目安を示した上で、各都道府県の審議会が答申し、労働局長が正式に決めます。
本年の目安においては、世界同時不況のあおりを受けて、経営側が厳しい姿勢を譲らず、労働側の要求にブレーキがかかった格好となりました。
最低賃金であっても、その収入だけで自立した生活が成り立つのが当然であり、働いて得た賃金が、収入のない人に最低限の生活費として支給される生活保護のレベルを下回るとしたら、働く意欲がそがれ、経済がますます停滞する恐れがあります。
賃金を含め、雇用のあり方などをどうしていくのか、国民の関心は高く、各党の公約にも注目されます。
自営業者らが加入する国民年金の保険料納付率が2008年度に過去最低を更新し、62.1%にとどまったことが明らかになりました。3年連続の低下で、政府の目標である80%を大きく下回りました。保険料の徴収を担当する社会保険庁が年金記録漏れ問題の対応に追われたうえ、雇用悪化で支払いに二の足を踏む人が増えたことも影響した模様です。
納付率の低下は将来、低年金・無年金者の増加につながります。社保庁は保険料の一部あるいは全額が免除になる制度の利用などを呼び掛けていますが、効果が挙がっていないのが現状です。
政府は2月に公表した年金の財政検証で、国民年金の納付率が80%で維持されると設定しています。その上で、将来の厚生年金の給付水準(所得代替率)は現役世代の収入の50・1%を維持できると試算しましたが、このまま納付率の低下が続けば給付水準の維持は難しくなります。
国民年金の現役加入者(第1号被保険者)数は昨年12月末現在、約1978万人。
国民年金は20歳以上60歳未満が加入。保険料の支払いを猶予・免除される低所得者などを除く全員に支払い義務があります。