じん肺と認定された元坑内作業員の男性(当時76歳)が自殺したのは闘病苦でうつ病になったのが原因として、妻(82)(福井県大野市)が、労災保険法に基づく遺族補償などを支給されなかったのは不当として、国に遺族補償年金などの不支給処分取り消しを求めた裁判の判決が9日、福井地裁でありました。
坪井裁判長は「病状や療養の心理的負担は過重で、自殺は業務上の死亡にあたる」として、自殺とじん肺の因果関係を認め、処分の取り消しを命じました。
判決によると、男性は1953〜71年のうちの7年3カ月間、各地のトンネル工事に従事してじん肺を発症し、84年にじん肺と診断され、85年に国の認定を受けました。その後の闘病生活でうつ病を患い、98年5月に自宅で首つり自殺しました。
遺族側は「じん肺による死の恐怖や闘病苦からうつ病を発症し自殺した」と主張し補償給付と葬祭料を請求しましたが、国側は「うつ病の発症前に、じん肺の症状急変や極度の苦痛発生は認められない」と反論し、大野労働基準監督署は2001年、不支給を決めました。
今回の判決で、坪井裁判長は「じん肺の病状や療養で受けていた心理的負荷は、うつ病を発症させる程度に重く、自殺に至った」としました。原告側弁護士によると、自殺したじん肺患者の遺族補償が認められるのは異例とのことです。
一方、名古屋法務局訟務部は「判決の内容を十分に検討し、関係機関と協議した上で控訴するかどうかを判断します」としています。
内閣府が9日発表した7月の景気動向指数(2005年=100、速報値)によると、足元の景気動向を示す一致指数は89.6となり、前月に比べ1.0ポイント上昇しました。上昇は4カ月連続となります。生産の回復が続き、電力使用量や製造業の残業時間も増えました。ただ有効求人倍率が低下しており、雇用情勢の悪化には歯止めがかかっていない状況です。
景気動向指数は生産や販売、雇用など、経済の動きに敏感に反応する指標を合成して算出します。内閣府は景気の基調判断について「下げ止まりを示している」との表現を維持しています。
一致指数の上昇に貢献したのは、製造業の残業動向を示す所定外労働時間で前月比6.6%増えました。一連の政策効果で自動車などの需要が増え、生産拠点の操業率が改善しているとみられています。
認可保育所を希望しながら満員で入所できない「待機児童」が、2009年4月1日現在で2万5,384人になったことが7日、厚生労働省のまとめでわかりました。前年(1万9,550人)と比べて29.8%増えており、増加の人数や率は現行方法で統計を始めた01年以来、過去最高でした。同省保育課は「働く女性が増えたことに加え、昨年からの経済情勢の悪化で、働く親が増えたことが影響しているのでは」とみています。
都道府県別では、東京が最多の7,939人。約8割が都市部に集中しており、市区町村別では、横浜市が最も多く1290人で前年より583人の大幅増。次いで川崎市713人(前年比130人増)、仙台市620人(同120人減)、東京都世田谷区613人(同278人増)、大阪市608人(同88人減)、名古屋市595人(同167人増)と続きます。
待機児童は04年から減り続けていましたが、昨年から増加に転じています。約8割を0〜2歳児が占め、特に1、2歳児が多いという。育児休業制度の普及で育休明けに働き始めるケースも増えているとみられています。
全国の保育所数は2万2,925カ所、定員は約213万2千人で前年より約1万1千人増えています。同課は「保育所の定員も増えているが、保育需要がそれを上回っている」としています。
社会保険庁は4日、厚生年金の算定基礎となる標準報酬月額の改ざんに、新たに職員2人が関与していたと発表しました。1人は同日付で訓告処分、もう1人は訓告相当としたが、退職しているため処分できないということです。改ざんに関与した職員の処分は7月末の職員2人を含め合計4人となりました。
新たに関与が判明した職員は、元厚木社会保険事務所課長と元広島西社会保険事務所課長の2人で、元厚木の職員は滞納額を少なくするため、事業主の同意を得て保険料納付の遅れていた分について納付しやすいよう標準報酬月額を引き下げ、元広島西の職員は事業主の合意を得て標準報酬月額を引き下げたものです。
標準報酬の改ざんの恐れのある約6万9千件のうち、社保庁は昨年10月から年金受給者の約2万件について早急な救済を狙い戸別訪問を実施してきましたが、そのうち社保庁職員の関与の疑いの強い1335件について、社保庁長官に委嘱された調査スタッフが20件弱を抽出し実態を調査し、今回の件が判明しました。
厚生労働省は2日、07年度に病気やけがのために医療機関に支払われた国民医療費が、前年度(33兆1276億円)に比べて1兆84億円増えて(3%増)、34兆1360億円と過去最高になったと発表しました。
これは高齢者の増加や医療技術の高度化で1人当たりにかかる医療費が増えたためで、年々増加傾向にありますが、06年度は診療報酬のマイナス改定の影響で前年度より減少したため、今回は2年ぶりの増加となりました。08年度はさらに増加したとみられています。
国民医療費は治療に充てた費用が対象で、健康診断や予防接種などは含みませんが、1年間にかかった医療費全体の指標として使われることが多く、厚生労働省は「高齢化の影響だけで国民医療費は5000億円程度増えた」とみています。
1人当たりの国民医療費も6万7200円で、前年度(25万9300円)より3%増え、過去最高となりました。