国立社会保障・人口問題研究所は22日、2007年度の年金、医療、介護などにかかった社会保障給付費が前年度より2.6%増の91兆4305億円と初めて90兆円台を突破し、過去最高を更新したと発表しました。統計を取り始めた1950年度以降、給付費の総額は毎年度増え続けています。
また、国民所得に対する割合も前年度比0.54ポイント増の24.4%で過去最高となりました。国民1人当たりの給付費は71万5600円に達しました。
社会保障給付費は年金や医療、介護、福祉などのために税金や保険料から支払った費用の総額で、病院での窓口負担や介護施設の利用料などの利用者負担は含みません。今後、鳩山政権は、来年度から中学卒業まで月額2万6000円(初年度は半額)を支給する「子ども手当」の実施や高齢者の医療費負担の軽減など、手厚い社会保障政策を打ち出しており、今後も給付費増加傾向が続くのは確実です。
部門別の割合は、(1)年金52.8%(48兆2735億円)(2)医療31.7%(28兆9462億円)(3)介護を含む福祉15.5%(14兆2107億円)の順でした。
厚生労働省は22日、「残業代を支払っていない」として労働基準監督署の是正指導を受けた不払い残業代が、08年度は196億1351万円で07年度比で約76億円、3割近く減少したと発表しました。是正指導を受け、100万円以上の不払い残業代を支払った企業数も1,553社で前年度より175社減少しました。厚労省労働基準監督局は「不況で全体的に残業が減っているのではないか」と分析しています。
100万円以上の不払い残業代を支払う対象になった労働者は過去3番目に多い18万730人(07年度比1187人増)、1人当たりの支払額は11万円(同4万円減)でした。支払額が最も多かった企業は道路貨物運送会社の14億7482万円。業種別では製造業381社、商業364社、接客娯楽業127社と続きました。
不払いの労働基準法違反で送検された悪質事例は42件(同7件増)で、虚偽の労働時間で支払うなどのケースが増えました。
政府の緊急雇用対策本部(本部長・鳩山首相)が策定する雇用対策の素案が21日、明らかになりました。
「介護」「グリーン」「地域社会」の3分野での雇用創出などが柱で、雇用の下支え・創出効果は「2010年3月末までに10万人程度」と見積もりました。23日の同本部で正式決定します。
働きながら職業能力を高める「緊急雇用創造プログラム」では〈1〉介護分野で、施設で研修勤務しながら介護福祉士などの資格試験を受ける場合、特例として実習を免除〈2〉農林、環境、観光の「グリーン」分野で、建設業などからの転職支援や人材育成〈3〉「地域社会」分野で、若者やフリーターの雇用支援を行うNPOなどを活用――などとしました。
生活困窮者らへの支援強化では「緊急支援アクションプラン」の策定を掲げ、東京・大阪・愛知など都市部のハローワークで職業あっせんのほか生活保護手続きなど複数の制度申請ができる「ワンストップサービス」を11月から試験実施することも盛り込んでいます。推進態勢強化へ、首相も加わる「雇用戦略対話」(仮称)を政府に、「地域雇用戦略会議」(同)を地域ごとに設ける方針も明記しました。
厚生年金の受給資格を満たしているのに、社会保険事務所の説明ミスによって7年間無年金となった千葉県の男性が国に年金支給の遅延損害金など約490万円の支払いを求めた裁判で、国が「窓口で説明を誤っても責任があるとはいえない」との主張を撤回することがわかりました。社保庁の説明ミスが原因で無年金となった人も少なくないとみられ、他の無年金者の救済にも影響を与えるとみられています。
23日の口頭弁論を前に、原告の代理人に「違法性、因果関係、国の責任に関する国の主張を撤回する」との準備書面が国から届いたとのことです。賠償額などを争う主張は撤回していません。厚生労働省幹部は「多大なご迷惑をかけた責任を認めるのは当然だ」と話しています。解決金の額など具体的な和解内容については今後詰めるそうです。
宮本さんは遅延損害金の利息について、国が保険料を滞納した人に課す年14.6%を適用するよう求めていますが、国は民法の規定に基づき、年5%を適用するなど、解決金の減額を求める見通し。
宮本さんは01年、千葉県内の社保事務所へ受給申請に訪れた際、厚生年金の受給に必要な加入期間(宮本さんの場合は240カ月)を満たしていましたが、職員が217カ月と計算ミスしたうえ、「受給資格は300カ月必要で期間不足」と言われました。昨年10月まで無年金となり、今年3月、国に損害賠償などを求め東京地裁に提訴。7月の口頭弁論で国は「(窓口での)回答は被保険者へのサービス」「誤った説明はただちに国家賠償法上で違法と認められるわけでない」などと主張していました。
生活苦から、車で寝起きする生活を続けているという宮本さんは「政権交代で、年金問題を追及してきた長妻さんが厚生労働相になった。一日も早く裁判を終わらせ、私と同じような悩みを抱えている年金受給者を救ってくれることを期待している」と話しています。
長妻昭厚生労働相は19日、厳しさが続く雇用情勢の現場を見るため、都内のハローワークと職業訓練校を視察しました。訓練校では自ら介護用のベッドに乗るなど積極的に講義に参加。「ハローワーク新宿」では現行制度の不満などを聞いて回りました。長妻厚労相が労働行政の現場を視察するのは就任後初めてです。
視察後、記者団に対して「訓練講座の定員枠が少なく、受けたくても受けられないという現実が多くある。希望する人全員が受講できるようにしたい」と指摘。今月23日にも取りまとめる緊急雇用対策で職業訓練の拡充策を盛り込む考えを示しました。
また、福祉専門学校では、職業訓練中の長期失業者に生活費を支給する「緊急人材育成支援事業」を利用して介護ヘルパーを目指している受講生の様子や、入浴実習室などを見学。厚労相は「厳しい雇用情勢の中、介護の現場は人手不足。多くの人が仕事に就けるようにしたい」と語りました。