長妻昭厚生労働相直属の年金記録回復委員会(委員長・磯村元史函館大客員教授)は25日、厚生年金の算定基礎となる標準報酬月額が改ざんされた「消された年金」問題などの被害者救済のため、記録訂正の基準を緩和する方針を了承しました。改ざんの疑いが強いとされる6万9千件の厚生年金は、証拠がなくても元従業員であることを確認できれば申し立てをすべて認めるとのことです。
基準緩和策は、厚労相や委員会の作業部会が検討していました。国民年金の保険料を払った記録のない「消えた年金」問題では、記録の空白期間が2年以内で1回だけの場合、ほかに未納期間がなく、空白期間に配偶者や同居する親族が保険料を納めていたことなどを条件に、空白期間も納付していたと認定するものです。
違法な勧誘で電話機のリース契約を結ばせたとして業務停止命令を受け、破産した訪問販売会社「メディアサポート」(大阪市)の役員と社員計12人について、厚生労働省は、破産会社に代わって支給する未払い賃金立替払制度を適用しないことを決めました。未払い分は総額約340万円で、「違法な営業を行っていた社員らを公金で救済するのはおかしい」という破産管財人の訴えを認めた形になります。同制度の適用を見送ったのは初めてです。
破産管財人の白出博之弁護士によると、営業マンらが「黒電話は近く使えなくなる」などと偽って高額な業務用電話機のリース契約を高齢者らと結んだなどとして、経済産業省は2006年7月、特定商取引法違反で同社に3か月間の業務停止命令を出していました。
同社は6日後、約30億円の負債を抱え、大阪地裁に破産を申請。被害にあった顧客は約430人を数えたましが、回収された約3900万円は納税などが優先され、被害者には配当されませんでした。
白出弁護士は、役員と違法勧誘をしていたことが確認された社員について立替払制度を受けられないよう、同制度の利用条件となる管財人の賃金未払い証明書を発行しないことにしました。同制度には違法企業の社員であることを理由に支給を拒む規定はありませんが、白出弁護士は「不正な手段で営業した役員や社員を保護するのは問題」と主張し、厚労省も同制度の適用を見送ることを了承したといいます。
破産前、同社役員は基本給で月120万円以上、営業担当社員も数十万円を受け取っていました。
雇用保険の給付手当が増加し続けています。雇用環境の悪化が理由で09年4月〜9月の失業手当の給付件数は133万7690件となり、08年同期に比べ29.5%の増加です。10月以降も前年実績を上回る公募が大きく、09年度通期では08年度の220万件を超えるのはほぼ確実です。
給付はリーマンショックが起きた昨年9月以降、13ヶ月連続で前年同月実績を上回って推移し前年実績と比べた増加率が最も大きかったのは4月の43.1%。これは、非正規社員らの雇用契約の更新が集中する年度末に契約を更新できず、職を失った人が急増したことが背景にあります。
10月以降は今年3月末の雇用保険法の改正により新たに適用対象となった人の受給が始まるため、再び増加傾向が強まる可能性が高くなると思われます。
連合は19日の中央執行委員会で、10年春闘の闘争方針案をまとめました。策定済みの基本方針に基づき、統一的なベースアップ要求を見送る一方、定期昇給に相当する「賃金カーブ維持分」の確保を掲げ、定昇水準として月額5千円を目安に示しました。12月3日の中央委員会で正式決定します。
連合が賃金カーブ維持分の目安を示すのは従来にない取り組みです。厳しい経済情勢を踏まえ、「来春闘は統一的なベア要求を出せる環境にない」と判断したが、傘下労組から「数値目標がないと交渉しにくい」という声が出ていました。
このため、もともと定期昇給がない中小企業や非正社員の底上げを念頭に、1年勤続した労働者が得られる標準的な昇給の水準を示しました。
団野久茂副事務局長は「中小企業の約8割は定昇制度がなく、大手の定昇と同等の要求をしないと賃金水準は下がる。これ以上、下げさせないための基準だ」と話しています。
パート労働者の時給も、この水準に見合った30円のアップや絶対額1千円程度などの目標を示し、いずれかの実現に取り組むとしています。
今後、闘争方針を正式決定した後、傘下の産業別組合や単組が個別事情を考慮して要求を固める。私鉄総連など一部の産業別組合は、ベア要求を掲げる方向で検討を進めています。
岐阜労働局のまとめによると、県内で100万円以上の賃金不払いのサービス残業があったとして、労働基準法違反で是正勧告を受けた企業が昨年度は49社、支払った残業代は約2億181万円に上ることがわかりました。
昨年度、企業が支払った残業代は約2億円で、調査開始以降、過去最高だった2007年度(約5億円)と比べ約3億円減と大幅に減少しました。同労働局は「監督指導の成果と、景気の悪化で残業そのものも減少したのではないか」とみています。
サービス残業が見つかったのは、49社の2798人。製造業が29社と最も多く、商業6社、建設業4社などの順で、1社当たりの平均は412万円、労働者1人あたり7万円でした。
業種別で支払った割増賃金が最も多かったのは製造業の7721万円。ほか、商業4922万円、通信業3031万円、建設業2016万円などが続きました。
是正勧告の事例では、通信業の会社で、労働時間を過少申告させていた実態が明らかになり、残業代約3000万円の支払い、商業の会社では、労働時間が警備記録と管理職のものとで大きな開きがあることが分かり、残業代約2350万円を支払いました。