厚生労働省は27日、患者の医療費負担を軽減する国の高額療養費制度で、患者の自己負担上限額を見直した場合の新たな試算を、社会保障審議会医療保険部会で公表しました。
70歳未満の患者の自己負担上限額(月額)について、年収約300万円以下を現行のほぼ半分にする一方、年収約800万円以上で約3万円、約1000万円以上で約10万円それぞれ引き上げるなどした場合、必要な財源は約2200億円になると示しました。
新たな試算は、加入者数が最も多い70歳未満の「一般所得者」のうち年収300万円以下の低所得層で上限額を4万4400円、支給4回目から3万5400円にする一方、年収約800万円以上の所得者は上限額を約18万円、支給4回目から10万円に引き上げると仮定しました。
さらに、年収1000万円以上の所得者は上限額を約25万円、支給4回目から14万円に引き上げると、前回試算から約360億円少ない約2200億円が新たな財源として必要になるとしています。
高額療養費制度の財源は会社員や自営業者らが負担する健康保険料と税金で賄われており、年収300万円以下の負担上限を下げると、健康保険料の引き上げや税金投入が必要になります。早ければ来年度中に基準を変更する方針ですが、このまま実現するかどうかは不透明です
現行の高額療養費についてはこちら(厚生労働省HPより、PDF)をご覧下さい。
厚生労働省の諮問機関である労働政策審議会(労政審)の分科会は、パートや
契約社員など雇用期間が定められた有期労働契約に関する規制強化策の検討
を始めました。正社員と比較して、雇用が不安定かつ待遇も低くなりがちな有期
契約労働者に対する権利保護を強化することが狙いとされています。
法改正を含めた具体策を検討した上で、2011年度中に結論を出す見通しです。
有期労働契約をめぐっては、厚労省の研究会が9月に問題点や検討課題を上
げた最終報告をまとめていました。この報告は、規制強化の具体策として、有期
労働契約が特定時期に生じる一時的な業務以外には認めない「入り口規制」と、
現在無制限になっている契約更新回数を制限する「出口規制」の双方を例示した
ものです。入り口規制はフランス、出口規制は英国やドイツで採用されており、労
政審はこれらを参考として具体策を協議することとしています。
また、有期契約労働者が特定企業と雇用契約を繰り返し更新してきたにもかか
わらず、合理的な理由なしに「雇い止め」になったケースに対して「無効」とする判
例が確立しています。今後は判例を参考にして、雇い止めを制限するルールの法
制化なども検討課題となります。
2008年のリーマン・ショック後の雇い止めなどが相次いだため、有期労働への
規制強化を求める声が強まっていますが、経済界からは「規制強化は生産拠点の
海外流出や中小企業の廃業に拍車を掛け、かえって雇用情勢を悪化させる」といっ
た批判も多いのが現状です。規制の大幅強化を主張する労働側と、経営側の主張
が対立し、調整が難航する恐れもあるとみられています。
1999年に会社のビルから飛び降り自殺をしたA社(東京)の社員(当時43歳)の遺族が、自殺は「上司の厳しい叱責などが原因だ」とし、労災を認めなかった国の処分取消を求めた訴訟の判決が18日、東京地裁でありました。
渡辺弘裁判長は、直属の上司による叱責は(1)ほかの人が見ている場所で公然と行った(2)感情的表現が多く「死ね」などの暴言もあった(3)他部署からも注意を受けるほどだった などとして「企業での一般的な水準を超えていた」と指摘し、不認定処分を取り消しました。
判決によると、男性は1997年7月からB社からA社に出向し経理などを担当。99年頃には、上司の課長から「会社を辞めろ。辞表を出せ」「死ね」などと激しく叱責されるようになり、うつ病を発症し、同年7月に会社のビルの6階から飛び降り自殺したということです。
外国籍であることなどを理由に大分市が生活保護申請を却下したのは違法として、
日本で生まれ永住権をもつ同市の中国籍の女性(78)が処分の取消や保護開始決
定を求めた訴訟の判決が18日、大分地裁でありました。
女性側は「少なくとも永住外国人には憲法で保障された生存権があり、生活保護法
が適用される」と主張しましたが、「生活保護法は日本国籍者に限定した趣旨。外国
人への生活保護は贈与にあたり、受給権はない」として女性の請求を退けました。弁
護団によると、永住外国人に対して生活保護の受給権を認めないと明示した判決は
初めてということで、女性側は控訴する方針です。
判決によりますと、この女性は2008年12月、大分市福祉事務所に生活保護申請
をしましたが「女性名義の預金が相当額ある」という理由で却下されました。 外国人
の受給権の有無と、経済状態などからこの女性が要保護者に当たるかということが
争点でした。
裁判長は受給権について、「永住外国人を保護対象に含めないことが憲法に反する
とは言えない」と述べて、事実上門前払いとする裁決をしています。
厚生労働省は、業務上のストレスが理由でうつ病などの精神疾患になった労働者の労災認定を早めるため、労災認定の「判断指針」を改正する方針を固めました。
現在、労災認定まで平均8・7か月(昨年度)かかっていますが、申請者から「治療や職場復帰が遅れる」との声が出ていました。
同省では6か月以内の認定を目指すことにしています。
15日から始まる専門家の検討会で協議し、来夏までの改正を目指します。
現在の指針は、ストレスの元となる職場での具体的な出来事について「対人関係のトラブル」や「長時間労働」などと例示した一覧表を基にして、ストレスの強度を3段階で評価しています。
その上で、職場外のストレスなどと比較し、職場の出来事が精神疾患の有力な原因と判断されれば原則として労災認定されます。