勤務していた産婦人科医院で作業中に扱った粉末「タルク」に混入したアスベスト(石綿)が原因で中皮腫になったとして、山口労働基準監督署で先月に労災認定された山口県防府市の元准看護師が2012年8月27日、大阪市内で記者会見し、「同じような作業をした医療従事者に私の経験を広く知らせたい。医療現場にもアスベストのリスクがある」と訴えました。
元准看護師は手術用ゴム手袋の再利用について、安全なもので代用し、粉末「タルク」をまぶす様子を再現。多数のゴム手袋が入った袋にまぶすと、白い粉が飛び散って浮遊しました。「当時はマスクもせずに作業をしていた。悪いものを扱っているという認識はなかった」と振り返り「私の認定をきっかけに多くの人がアスベストや中皮腫に関心をもって早く被害に気づき、新たな労災認定につながればうれしい」と話しました。
元准看護師は2009年12月に転職のために受けた健康診断で、中皮腫と診断されました。石綿との接点が不明でしたが、「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の会長が調査した結果、元准看護師が1981年から1986年まで約5年勤務した産婦人科医院で、医師や助産師らの手術用手袋を洗って乾燥させた後、袋の中に入れてタルクをまぶす作業に従事しており、1週間に1、2回ある作業の際にタルクに混入していた石綿を吸い込んだとみられています。元准看護師は2011年8月に労災を申請しました。タルクは白色の石で、細かく砕き粉にしたものは医療現場のほか、工業製品の製造やベビーパウダーなどにも使用されていましたが、石そのものについてアスベストが混入が発覚し、2006年以降はアスベスト含有量0.1%超のタルクは製造や使用が禁止されました。
大阪府内の外科医によると、約20年前まで多くの外科系の医療現場では、手術用手袋を洗浄した後にゴムの癒着防止などのためにタルクをまぶして再利用していたとのことで、現在は手袋を再利用していないとのことです。タルクが原因とみられる石綿関連疾患による労災認定は、ゴム製品製造の従事者や歯科技工士など全国で約15例あるそうです。
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