2012年4月2日、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2012年度は11年度比37%増となる8兆8千億円の積立金を取り崩すことを発表しました。4年連続の取り崩しで、過去最大規模となります。団塊世代が年金の受給年齢にさしかかり、年金支払いが増えることが背景となっています。GPIFは主に保有する国債を売却して現金化する方針です。市場では、GPIFが国債の大量売却をした場合、長期金利の上昇要因になるとの警戒の声が出ています。
厚生年金と国民年金の給付費の合計はGPIFが発足した2006年度の37兆円から長寿化や団塊世代の大量退職の影響で、2012年度(予算)は45兆円と2割の増額となりました。このためにGPIFは、以前は保険料・税収入と運用益で積立金は増える見込みであったところを、2009年度から保有する資産を市場で売却して年金支払いに充てるようになりました。
2012年度取り崩し額の大幅な増額には、政府が基礎年金の国庫負担分として発行する2兆5千億円の交付国債が即時には現金化できないという事情や、2012年度発動予定だったマクロ経済スライド(人口減に連動して年金給付を抑制)の発動条件が整わず導入できない状況であるという事情があります。交付国債は消費増税が実現すれば、償還できるという条件が付いており、将来の増税を見込み、積立金を先に運用する形になっています。
政府は2014年度に消費増税を実施する予定で、それまでのつなぎ財源として2012年度と2013年度は交付国債を発行し、GPIFに運用させています。当初の想定では6兆円規模の取り崩しであったところに、2012年度と2013年度予算では交付国債分が加わり、8兆円規模の取り崩しが続くこととなります。
政府の年金の給付と負担の計画は公的年金の積立金が長期的には4.1%の運用利回りを稼ぐという前提ですが、想定を上回る積立金の取り崩しが長期間続けば、現役世代が老後に受け取る年金財源に影響が出る可能性もあります。
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