従業員が過労死などで労災認定された企業名を不開示とした大阪労働局の決定は違法として、「全国過労死を考える家族の会」代表が決定の取り消しを求めた訴訟で、大阪地裁(田中健治裁判長)は2011年11月10日、不開示の取り消しを命じる判決を言い渡しました。弁護団によると、労災認定を巡って企業名の開示を命じた判決は初めてのケースです。
原告側は2009年、大阪労働局に2002〜2008年度の労災補償給付の支給決定年月日と企業名の開示を求めました。労働局は決定年月日を開示したほか、職種や疾患名などの一部の情報を任意開示したが、
企業名は個人情報の特定につながるとして、不開示としていました。
判決では企業名を公表したとしても「一般人が他の情報と照合しても、企業名から特定の個人を識別するのは不可能」として、情報公開法の不開示情報に当たらないと指摘し、不開示は違法と判断しました。
国側は「企業名が開示されれば社会的評価が低下する」と主張しましたが、判決は「取引先の信用を失ったり、就職を敬遠されたりする恐れは可能性に過ぎない」と退けました。
判決は、労働局の資料に企業名の記載欄がなかった2004年度以外を開示対象としました。
大阪労働局は「今後の対応については、判決内容を検討し、関係機関とも協議して判断したい」としています。
◇49歳で自殺…飲食店店長、ノルマに追われ
Aさんの夫は1996年、49歳で自殺しました。夫は飲食店店長で、人手不足の中で厳しいノルマに追われた末の過労死でした。Aさんは夫の死後に労災申請し、2001年に認定を受けました。夫の勤務先に損害賠償を求めた1審で勝訴し、控訴審で和解しています。社長がAさんに謝罪しています。
Aさんは過労死で家族を亡くした人の支援を始め、一つの企業で複数の過労死が起きている実態を聞いたといいます。Aさんは判決後の会見で「企業名の公表で、企業が本気で過労死などの防止策を考える流れを作りたい。こうした企業の実態を知らずに就職する人が多く、企業名は公表されるべきだ」と指摘しました。
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