アスベスト(石綿)が原因で肺がんになった男性(71)が、30年以上前の電気工事工時代の労災保険が適用されず、休業補償が半額以下になったのを不服として国を相手取り、処分取り消しを求めた訴訟の判決が30日、横浜地裁でありました。
原告の男性は1955年から電気工事工として働いた後、87年に会社を設立し、94〜01年に自営業者向けの労災保険に特別加入しました。
04年に肺がんと診断され、労災認定を求めましたが、労働基準監督署は06年、直近職場での保険を適用する厚労省の基準に沿って、特別加入の労災保険を適用し、休業補償を年間約146万円に決定しました。男性は「肺がんは電気工事工時代の石綿が原因」として、当時の労災保険に基づく年間約320万円以上の休業補償を求め、行政不服審査を申し立てたが棄却され、昨年3月に提訴しました。
今回の判決で裁判長は、石綿肺がんの多くは潜伏期間が20〜60年程度と非常に長いことを指摘しました。
この男性は会社設立後の仕事では石綿と濃密に接触していない一方、電気工事工時代に高濃度の石綿を吸ったため肺がんにかかったと認定し、発症直近の労災保険を適用する厚生労働省の基準を批判したうえで、処分を取り消しました。
同様の訴訟は岡山地裁でもあり、厚生労働省の適用の判断に影響を与えそうです。厚生労働省補償課は、「特別加入と労働者期間が併存する場合については最近の医学的な知見などを踏まえ取り扱いを研究している。」と話しています。
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